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Q1 最近,テレビや新聞などで,遺産相続にまつわるトラブルが多いと聞くことがありますが,なぜ,最近,遺産相続にまつわるトラブルが多いのでしょうか?
A1 一つの理由として,みなさんの権利意識の高まりがあります。戦後,家督相続制が廃止された後も,長男が一家の財産を相続するという意識が強かったため,他の相続人が相続に際して相続分の財産を要求することが少なかったのです。また,相続人から不平不満がでたとしても,ある程度の清算金を支払うことによってトラブルになる可能性が少なかったのです。ところが,最近では,みなさんの権利意識が高まり,それぞれの相続分に応じた財産を求めるということが多くなりました。
また,核家族化の進行に応じて,それぞれの相続人が近隣に住み,長年にわたって助け合いながら生活を送ることが少なくなりました。この結果,昔と違って相続のときに,それぞれの相続人に“遠慮”というものが無くなってしまったという状況があります。
さらに,日本の高度経済成長期を機に,不動産の価格が以前とは比較にならないほど上昇しました。そして,相続財産の主なものは不動産という現状があり,それぞれの相続人が不動産について,それ相応の分与を受けない限り納得できないという事情もあります。
遺産相続がトラブルに発展する理由は,以上に示したものだけに限りませんが,私の経験からいえば,これらの事情がトラブルを複雑にし,解決困難なものとしているといえるのです。
Q2 遺産相続の問題は,“難しい”とよく聞くのですが,一体どのようなところが難しいのですか?
A2 遺言も何もない場合,遺産相続は民法にしたがって行われますが,民法には遺産相続の順位,遺産相続できる割合について規定されています。ます,これを理解しなければなりません。
遺言がある場合にも,後ほど説明する遺留分の問題が発生します。この遺留分の問題は,トラブルになると非常にやっかいな問題です。また,遺産相続の放棄が行われた場合,どの程度遠い親族まで遺産を相続することになるのか等の問題もあります。Q3 相続人の間で人間関係まで崩壊してしまわないようにするにはどうすればよいのでしょうか?
A3 まずは,あなた自身,過分な主張を行わないということが大切です。
また,他の相続人の意見によく耳を傾け,遠慮がちな主張があった場合にはそれを評価して,他の相続人の意見の真意を理解してあげる必要があります。遠慮がちな相続人は,あなたや他の相続人のことを思ってそのような主張を行っているのですから,それを正当に評価しなければ,やっかいなトラブルに発展することになりかねません。
あなたが,遺産相続において,このような対応を行うには遺産相続についての基本的な知識をもっていることが必要になります。このホームページに掲載されている複数の弁護士の説明を大いに活用し,遺産相続についての基本的な知識を身につけ,あなた自身が直面する遺産相続に役立ててください。 相続の問題は裕福な方のみの問題ではありません。
Q4 私の実家には多額の財産があるわけではないので,遺産相続は関係ないと思うのですが?
A4 そのようなことはありません。
遺産相続の対象となるのは,不動産や株式,預金などのプラスの財産だけはなく,借金などのマイナスの財産も含まれます。例えば,亡くなられた方が事業を営んでいるとき,事業を営むことによって形成された財産だけでなく,事業に伴う借金も相続することになります。これをどのように相続するのかという問題は非常に難しい問題です。相続人が次々に相続の放棄をしてしまうと,予想もしない借金を一人で背負わされるということもありえることです。私も,次々に遺産相続の放棄が行われ,多額の借金があることも知らずに相続を認める行為を行ったため,悲運なことに自己破産手続を行わざるを得なくなった方を知っています。
また,実家にある山林や農地を管理していくには,肉体的にも,金銭的にも大きな負担を強いられることがあります。このような山林や農地を誰が引き継いで管理していくのかということも決定していかなければなりません。
さらに,遺産相続に付随する問題として,両親の一方が亡くなったときに残された者の面倒を誰がみるのかという問題もありますし,先祖代々お祭りをしてきたお墓などの祭事をだれが受け継ぐのか,地域社会で様々な行事がある場合に誰がそれを引き継ぐことになるのかなど,いろいろな問題が浮上してきます。
相続の問題というのは,なにも一部の富裕層だけの問題ではなく,この世の中で社会活動を行っている限り,誰しも直面する問題であるということを忘れないでください。
Q5 私の両親はまだまだ元気なので,当分の間,相続の問題は私には関係ないと思うのですが。
A5 そのようなことはありません。
不謹慎な話かもしれませんが,健在なご両親が交通事故にあって突然亡くなるということも考えられます。また,相続は,なにも両親からのものに限られるわけではありません。相続は,場合によって祖父母から受けるということもあれば,あなたの兄弟姉妹からの場合もありますし,叔父・叔母の場合も考えられます。さらに,決して望まれることではありませんが,あなたの子供から相続を受けるという場合も考えられます。
このように,相続は,親族の中の広い範囲で発生する上に,人はいつ亡くなるか予測もできません。ですから,あなたの両親が健在であるからといって,相続問題が関係ないと結論づけるのは大間違いです。
Q6 「相続」という言葉以外に,「贈与」,「遺贈」という言葉を聞いたことがあるのですが,どのような違いがあるのですか?
A6 相続は,人の死亡を契機に当然に発生し,亡くなった方の意思は関係ありません。また,相続の場合,亡くなった方の財産や借金等が,相続人に包括的に承継されることになります。相続には,法定相続と遺言相続の2種類があります。
贈与は,AさんがBさんに無償で特定の財産を与えることを約束するという契約のことです。贈与する方が亡くなったときに贈与する契約のことを死因贈与といいます。また,一定の負担を付けて相手方に贈与することを負担付贈与といいます。そして,贈与は,契約書を作成しておかないと,いつでも撤回することができます。
遺贈は,遺言によって遺産の全部または一部を無償で,あるいは一定の負担を付けて他の者に与えることをいいます。遺言によって財産を受ける人のことを受遺者といいますが,受遺者は,相続人である必要はありません。また,遺贈には,遺言に財産を特定して記載する特定遺贈と,遺言に与える割合のみを記載する包括遺贈の2種類があります。
死因贈与と遺贈は,よく似ていますが,死因贈与は契約であるため相手方の承諾が必要になります。ところが,遺贈は,一方的な行為であるため,相手方の承諾が必要ありません。ただし,受遺者には,遺贈を拒否する権利が保障されています。