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中小企業経営承継円滑化法

Q169 私は,父と一緒に会社を経営しており,父が亡くなった後も経営を続けていくつもりです。ただ,父の財産といえば,私と一緒に経営している会社の株式と自宅マンションくらいしかありません。父が亡くなったときに,私の兄弟から遺産分割を求められると,会社の経営事態が困難になる可能性があります。なにかよい手だてはないでしょうか?

A169 事業資産を後継者に集中的に承継できないために廃業に追い込まれる例が相当数ある現状を踏まえて,中小企業における経営の円滑化に関する法律(一般には,中小企業経営承継円滑化法とよばれています。)を制定しました。この法律は,事業承継に際しての民法の遺留分に関する規定に特例を設けること,金融支援措置を行うことを二大柱としています。
また,平成21年中に経済産業大臣の認定を受けた非上場の中小企業の株式等に対する課税価格の80%に対応する相続税について納税を猶予することを内容とした税制改革が行われる予定になっています。

Q170 中小企業経営円滑化法で定められた民法の遺留分に関する特例というのは,どのような内容になっているのですか?

A170 大きく分けて2つあるのですが,1つは贈与株式などを遺留分算定の基礎財産から除外できる制度の導入です。そして,もう一つは,贈与株式の評価を予め固定できる制度の導入となっています。

Q171 贈与株式などを遺留分算定の基礎財産から除外できる制度とはどのような内容ですか?

A171 先代経営者から贈与などにより取得した自社株式や一定の財産について,遺留分算定の基礎財産から除外することを,事業の後継者と,先代経営者の遺留分を有する推定相続人全員との間で合意することによって,遺留分算定の基礎財産から除外してもらう制度です。
後継者が合意をとりつける相手は,遺留分を有する推定相続人となりますので,先代経営者の兄弟姉妹を除く,全ての推定相続人ということになります。

Q172 贈与株式などを遺留分算定の基礎財産から除外できる制度は,後継者と推定相続人が合意するだけで認められるのですか?

A172 いいえ。
   この制度が相続人の遺留分を奪うための手段として悪用されないように,経済産業大臣の確認を得た上で,家庭裁判所の許可を受ける必要があります。

Q173 贈与株式の評価を予め固定できる制度とはどのような内容ですか?

A173 遺留分の算定に際して参入すべき生前贈与などによって取得した株式の価格について,事業の後継者と,先代経営者の遺留分を有する推定相続人全員との間で合意することによって,取得した株式の価格を合意時の評価額に固定する制度です。
この制度も,遺留分を有する推定相続人となっていますので,合意をとりつけるのは,先代経営者の兄弟姉妹を除く推定相続人全員となっています。

Q174 贈与株式の評価を予め固定できる制度も,合意だけでは認められないのでしょうか?

A174 認められません。
贈与株式などを遺留分算定の基礎財産から除外できる制度と同様に,経済産業大臣によって合意内容などを確認してもらい,家庭裁判所の許可を得る必要があります。

Q175 贈与株式などを遺留分算定の基礎財産から除外できる制度や,贈与株式の評価を予め固定できる制度を利用できる中小企業とはどのような中小企業ですか?

A175 これらの制度を利用できる中小企業は,3年以上継続して事業を行っていることが前提となります。
この要件があることを前提に,業種,資本金,従業員の数によって決定され,次のようになっています。
製造業などについては,資本金3億円以下,従業員数300人以下。
卸売業については,資本金1億円以下,従業員数300人以下。
小売業については,資本金5000万円以下,従業員数50人以下。
サービス業については,資本金5000万円以下,従業員数100人以下。

Q176 事業の承継者が推定相続人でない場合にも,贈与株式などを遺留分算定の基礎財産から除外できる制度や,贈与株式の評価を予め固定できる制度を利用できるのですか?

A176 利用できません。
あくまでも,遺留分を有する推定相続人のうち少なくとも1人に対して株式等を贈与した場合に限ります。
承継者に第三者が含まれていてもよいのですが,その場合には承継者を複数人とし,その一人に遺留分を有する推定相続人を含ませておく必要があるのです。
また,遺留分を有する推定相続人ですので,承継者が先代の兄弟姉妹やその子は含まれませんので注意が必要です。

Q177 父の会社は,議決権が全くない株式や,特定の事項についてのみ議決権がある株式を発行しています。議決権が全くない株式や,特定の事項についてのみ議決権がある株式の贈与についても,贈与株式などを遺留分算定の基礎財産から除外できる制度や,贈与株式の評価を予め固定できる制度を利用できるのですか?

A177 株主総会において議決権が全くない株式については利用することはできません。
しかし,株主総会において,特定の事項についてのみ議決権がある株式については利用することができます。
 贈与株式などを遺留分算定の基礎財産から除外できる制度や,贈与株式の評価を予め固定できる制度は,複数の相続人に株式が分散し,会社の経営が円滑にすすめることができないことを防止するのが目的です。ですから,株主総会において議決権が全くない株式については利用することができないのです。

Q178 父は,会社の代表権をもっていませんが,専務取締役で株式も40%も持っています。父が引退するにあたり,代表権をもっている社長一族からは,私が父の跡をついで専務取締役に就き,株式も承継して欲しいと言われています。この場合にも,贈与株式などを遺留分算定の基礎財産から除外できる制度や,贈与株式の評価を予め固定できる制度を利用することはできますか?

A178 できません。
これらの制度は,あくまで会社経営を円滑にするための制度ですので,現在あるいは過去に代表権を持っている者からの承継に限定されているのです。

Q179 父は,既に会社の代表権を第三者に譲っておりますが,会社の株式のみ100%持っている株主です。このような父の株式を承継する場合に,遺留分算定の基礎財産から除外できる制度や,贈与株式の評価を予め固定できる制度を利用することはできますか?

A179 利用することができます。
先代の経営者には,既に代表者を退任している方や,承継される方とともに代表権をもっている方も含まれています。

Q180 私と父は,祖父の会社を手伝っています。祖父は,父に会社を継がせることを予定して,父に株式を贈与していたのですが,父が亡くなりました。この後,私が祖父がもって株式を承継し,会社経営を行っていきたいと考えています。この場合にも,贈与株式などを遺留分算定の基礎財産から除外できる制度や,贈与株式の評価を予め固定できる制度を利用できるのですか?

A180 利用できます。
これらの制度を利用できる承継者には,先代から贈与を受けた者,その者からさらに相続,遺贈,贈与を受けた者となっています。ですから,質問の場合や,遺贈・贈与で株式を承継した者であっても利用することができるのです。

Q181 私は,父から遺言を見せてもったところ,父が持っている株式の全てを相続するという内容になっています。父が亡くなった後に兄弟けんかになるのがいやなので,父が生きている間に,遺留分算定の基礎財産から除外できる制度や,贈与株式の評価を予め固定できる制度を利用することを考えています。   この場合にも利用することができますか?

A181 利用することはできません。
これらの制度は,現実に贈与や遺贈を受けている場合にのみ適用されますので,まだ見込みの段階では利用することができないのです。

Q182 私は,父から父が経営する会社の45%にあたる株式を承継しました。この場合にも,遺留分算定の基礎財産から除外できる制度や,贈与株式の評価を予め固定できる制度を利用することは可能でしょうか?

A182 利用することはできません。
これらの制度は,株主が分散することで会社経営が円滑にできなくなることを防止するための制度ですので,制度を利用できる者は,議決権を有する株式の過半数にあたる株式を承継することが前提となっています。

Q183 遺留分算定の基礎財産から除外できる制度や,贈与株式の評価を予め固定できる制度は,合名会社,合資会社,合同会社においても利用することはできますか?

A183 利用できます。
法は,承継される対象を「株式又は持分」と規定しており,この「持分」は合名会社,合資会社,合同会社の持分を予定しているのです。

Q184 遺留分に関する民法の特例制度を利用するためには,他の推定相続人とどのような合意を行えばよいのですか?

A184 合意すべき内容として以下のものがあります。
Ⅰ 後継者が贈与を受けた株式等を遺留分算定の基礎財産から除外すること
Ⅱ 後継者が贈与を受けた株式等の評価額を合意時点で固定すること
これらは,いずれか一方のみを合意することもできますし,両方について合意をしておくこともできます。
さらに,付随的に以下の財産について遺留分算定基礎財産から除外する合意を行うことも可能です。
Ⅲ 後継者が贈与を受けた株式等以外の財産
Ⅳ 非後継者が贈与を受けた財産

Q185 後継者が贈与を受けた株式等を遺留分算定の基礎財産から除外することの合意をするメリットを教えてください。

A185 後継者が先代代表者から贈与などにより取得した株式などを,遺留分算定の基礎財産から除外することを合意すれば,贈与などされた株式などは,遺留分算定の際の基礎財産に参入されず,遺留分減殺の対象とはなりません。この結果,先代代表者の相続により株式等が分散されずに済み,後継者による会社経営が円滑に行われるのです。

Q186 後継者が贈与を受けた株式等の評価額を合意時点で固定することの合意をするメリットを教えてください。

A186 後継者が先代代表者から贈与などにより取得した株式などの価格を合意時に固定することによって,後継者が株式などを譲受けてから先代代表者の相続が開始するまでの間に,後継者の努力によって株式などの価値が大幅に増加したとしても,合意時の価格に固定されるため,後継者が株式などの価値を増加させる,つまり会社を優良なものにすることに邁進できるのです。

Q187 後継者が贈与を受けた株式等の評価額を合意時点で固定することの合意のメリットは理解できましたが,デメリットはないのですか?

A187 デメリットもあります。
後継者がいくら努力しても経営環境の変化により会社の業績が悪化し,先代から承継したときよりも株式などの価値が大幅に下落することも考えられます。このような場合,株式などの評価額を合意時点で固定したために,相続が開始時における他の推定増続人の遺留分が逆に大きくなってしまうというリスクがあるのです。

Q188 後継者が贈与を受けた株式等の評価額を合意時点で固定する制度を利用する場合の合意時の価額というのは自由に決定することができるのですか?

A188 合意時の価額については,弁護士等の専門家が「その時における相当な価額として証明したもの」であることが必要になります。そして,株式などの評価方法についてはガイドラインで公表される予定になっています。ですから,価額を自由に決定することはできません。

Q189 後継者が,代表者を辞任したり,株式を譲渡してしまった場合,非後継者がとることができる手段には,どのようなものがありますか?

A189 先代代表者の推定相続人らが,予め協議しておくことにより,後継者が代表者を辞任した場合や,株式を処分してしまった場合の措置について決定しておくことができます。法律では,非承継者がとるべき措置を定めておらず,推定相続人らが合意書を作成する際に決定することになります。とりうる方策としては,非承継者による合意解除,一定の違約罰を支払わせるということが考えられます。

Q190 後継者は,遺留分に関する民法の特例制度により,株式や持分以外の財産についても遺留分に関する特例を適用させることができるのですか?

A190 可能です。
後継者が先代代表者から会社が使用している不動産や事業資金として使用する現金等の贈与を受けている場合,合意により,遺留分算定の基礎財産に算入しないことにすることが可能です。先代代表者個人の財産であっても,事業継続に不可欠な財産がありますが,このような財産についても後継者に集中させ経営を円滑にするために設けられました。

Q191 事業に用いられている財産を後継者に集中させることを,非後継者である推定相続人に納得してもらうために何らかの手当をする必要があると思うのですが,どのような手当をとることが可能ですか?

A191 非後継者である推定相続人から同意をえるためには,これらの者に対して何らかの手当をとっておく必要がありますが,そのような手当は,後継者が贈与を受けた株式等を遺留分算定の基礎財産から除外すること,後継者が贈与を受けた株式等の評価額を合意時点で固定することの合意する際に,全員の同意をもって決定しておく必要があります。    後継者から非後継者に対して一定額の金銭を支払う,あるいは,先代代表者の生活や療養看護を行うなどといったものが考えられます。

Q192 後継者以外の推定相続人が取得した財産についても,遺留分算定の基礎財産から除外することが可能なのですか?

A192 可能です。
  非後継者である推定相続人から同意をえるための方策として,非後継者が先代代表者から贈与された事業とは無関係な財産についても遺留分算定の基礎財産から除外することが可能です。

Q193 遺留分に関する民法の特例制度を利用するため推定相続人の合意を取り付けようと思っているのですが,どうしても弟の協力を得ることができません。このような場合,弟を除いた全ての推定相続人の合意によりこの制度を利用することはできますか?

A193 できません。
先代経営者の推定相続人の一人が後継者になる場合には,全ての推定相続人の合意が必要になります。

Q194 遺留分に関する民法の特例制度を利用するための推定相続人の合意は,口頭による合意でよいのでしょうか?

A194 書面によって合意する必要があります。この制度は,民法で保障された遺留分について重大な変更を加える制度ですので,推定相続人に慎重な判断を行ってもらうという意味で書面による合意を必要としているのです。

Q195 先代経営者の死亡や退任によって事業承継をする場合に,特別な融資が受けられると聞きました。どのような融資制度があるのでしょうか?

A195 経済産業大臣の認定を受けた非上場会社や個人事業主は,信用保証協会で保証を行ってもらい金融機関から借入れを行ったり,認定を受けた非上場会社については,日本政策金融公庫(旧中小企業金融公庫)から代表者個人の名義で低利の融資を受けることができます。

Q196 なせ,先代経営者の死亡や退任によって事業承継をする場合に,特別な融資が受けることができるのでしょうか?

A196 先代経営者が死亡したような場合には,相続人に分散した株式や持分,事業用資産を買取る必要があります。また,突然の代表者の交代により債権の回収が思うように行かない一方で,支払いについては期日どおり行う必要があります。さらに,代表者の交代により取引先から支払いサイトを短縮されることもあります。
このように,事業が承継されるときには,様々な理由により資金需要が高まるのが一般的で,事業者の資金需要に応えるために設けられました。

Q197 信用保証協会の保証付融資制度について説明してください。

A197 経済産業大臣の認定を受けた非上場会社や個人事業主は,中小企業信用保険法に規定されている普通保険(限度額2億円),無担保保険(限度額8000万円),特別小口保険(限度額1250万円)については別枠化され,信用保証協会の保証のもと金融機関からの借入れができるのです。借入金の使途については,主に,株式や事業用資産等の買取資金や信用状態が低下している中小起業者の運転資金等となっています。

Q198 日本政策金融公庫(旧中小企業金融公庫)からの融資について説明してください。

A198 経済産業大臣の認定を受けた中小企業(会社)の代表者個人が受けられる融資です。この融資の利点は,特別金利による融資が受けられるという点です。資金使途については以下のように限定されています。
Ⅰ 先代代表者が事業の用に供されている個人資産を担保として会社の事業資金を借入れている場合の返済資金
Ⅱ 後継者個人が株式等や事業用資産等を買い取る場合に必要となる資金
Ⅲ 先代経営者の相続に関して,後継者を含む相続人間で,以下に掲げるいずれかを内容とする①判決の確定,②裁判上・裁判外の和解,③審判の確定,④調停の成立により,後継者が負担した債務を支払うために必要な資金。

イ 先代経営者からの相続にあたって,遺産に株式等や事業用資産等が含まれる場合に,後継者がこれらの資産を取得するために,非後継者にその代償として金銭を支払うこと。
ロ 先代経営者からの相続にあたって,株式等や事業用資産等を相続若しくは遺贈又は贈与により取得したことによって非後継者の遺留分を侵害したため遺留分減殺請求を受けた場合に,非後継者にこれらの資産を返還する代わりに金銭を支払うこと。

Ⅳ 後継者が相続若しくは遺贈又は贈与により先代経営者から取得した中小企業者の株式等や事業用資産等に課される相続税や贈与税を納付するための資金。
Ⅴ 以上の他,中小企業者の事業活動の継続にために,後継者個人が特に必要とする資金。

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