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遺産相続開始直後の問題

Q7 遺産相続は,いつはじまることになるのですか?

A7 みなさんの中には,相続人の間で協議を行い,話し合いがついて遺産を分けたときに遺産相続がはじまり,完了したと勘違いされている方が多いのではないでしょうか。遺産相続は,財産を残した方が亡くなるのと同時に発生するのです。そして,遺産増続が開始すると,亡くなられた方の遺産は,民法に定められた相続分に応じて相続人全員が共有している状態になるのです。
その後,行われる遺産分割協議は,この共有状態にある遺産を,それぞれの相続人分ける行為なのです。例えば,遺産として土地と預金があった場合,協議の結果,相続人Aさん土地を取得し,相続人Bさんが預金を取得するというのは,土地についてのBさんの権利と預金についてのAさんの権利を交換するという発想で考えればよいと思います。
仮に,遺産分割協議を行わなかった場合や,遺産分割協議がまとまらなかった場合にどうなるかといいますと,相続人全員で遺産を共有している状態が続くだけなのです。

Q8 遺産相続が死亡と同時に開始するというのであれば,亡くなった直後に遺産分割の話合いをしなければならないのでしょうか?

A8 そのようなことはありません。
人が亡くなると,3日程度で通夜・葬儀を行い,埋葬することになります。
同居の親族などは,市区町村長に対して,亡くなってから7日以内に,死亡届を出さなければならず(戸籍法86条),この死亡届には,医師の死亡診断書か死体検案書も提出することが求められます。
ここで,亡くなられた方を埋葬するには,市区町村役場の許可が必要になり,この許可を得るためには死亡届を行っておく必要があるのです(埋葬等に関する法律5条)。また,埋葬は,死亡直後24時間以内に行ってはいけません(同法3条)。
また,生命保険の受け取りなどには死亡診断書の提出が求められますので,死亡診断書は何通かもらっておく方がよいです。
以上を整理しますと,人が亡くなられた後,死亡診断書を必要と思われる通数受取り,通夜を行うこととなります。併せて,市区町村長に対して死亡届を行い,埋葬許可を得た上で,葬儀を迎え埋葬することになるのです。
通夜・葬儀で3日程度を要することになりますから,初七日は葬儀の後4日目に行われることになります。なお,初七日については,遺骨が戻ってきたときに仮に済ませることもあります。
その後,四九日法要があります。 この間,多くの場合,仕事を抱えながら行うことになるのですから,非常に大変な時期だと思います。ですから,四九日法要が終了し,忌明けを迎えてから遺産分割の話合いを行うことが一般的です。亡くなられた直後に,遺産分割についての話を持ち出すと不謹慎だと思われますし,遺産分割の話し合いの妨げになる可能性もありますので,注意が必要です。

Q9 葬儀に要する費用は高額ですが,この費用は相続人が負担すべきものなのでしょうか。

A9 民法885条では,相続財産に関する費用は,相続財産の中から支払ってもよいと規定されています。
この相続財産に関する費用とは,相続財産の維持・管理にかかる費用のことを指します。亡くなられた方の葬儀費用は,厳密に言いますと相続財産の維持・管理に必要な費用ではありませんが,法律の世界でも葬儀は一般的に必要不可欠な祭事で,当然執り行われるべきものと考えられていますので,相続財産の維持・管理に必要な費用と考えられています。
「葬儀の費用は各共同相続人が,その相続分に応じて負担すべきものである。」という判例がありますが,この判例は,相続財産から直接葬儀費用を捻出することを禁止しているのではなく,葬儀費用に関しては相続人が相続分に応じて平等に負担すべきであり,特定の相続人に負担させてはいけないことを示しているのです。
よって,葬儀費用を亡くなられた方の遺産から支払うことが認められています。
ここで,注意しなければならないのが,銀行など業務との関係です。通常,亡くなられた方の葬儀,その人の預金から支払われることが多いのですが,銀行などに本人の死亡を伝えますと,戸籍と相続人全員の実印を押印した承諾書が必要になり,円滑に出金することができなくなります。

Q10 遺産相続にまつわる税金には,どのようなものがあるのですか?

A10 遺産相続にまつわる税金については,後ほど詳細に説明しますが,大きく分けて亡くなられた方の所得税の申告と,相続人が収める相続税があります。
亡くなられた方に収入があった場合,生前はご自身で所得税の申告をされていたでしょうが,最後の申告の対象となった月以降の所得については未申告のまま放置されています。この場合,相続人が亡くなられた方に代わり所得税の申告をしなければならないのです。そして,この申告は,死亡の日の翌日から4ヶ月以内に,申告の上税金を納付しなければなりません。
また,相続人が納付する相続税については,死亡の日の翌日から10ヶ月以内に,申告の上納付しなければなりません。相続税の納付は,現金や物で行うことができますし,納付を猶予してもらう延納というシステムもあります。
気をつけないといけないのが,所得税にしろ,相続税にしろ,遺産分割についての話し合いが決着しているか,していないかとは関係なく,納付期限を迎え,このときまでに納付しなければ延滞税を課せられるということです。遺産分割協議が長引き決着がついていなくても,死亡の日の翌日から10ヶ月以内に,単独であるいは相続人全員で相続税の申告を行わなければならないことには注意が必要です。

Q11 遺産相続が,死亡と同時に当然にはじまるということは,相続人は必ず相続しなければならないことになるのですか?

A11 そのようなことはありません。 遺産相続が亡くなられた方の死亡と同時に当然にはじまるというのは事実ですが,相続人が相続を受けるかどうかとは区別して考えなければなりません。遺産相続は,不動産や預金のようなプラスの財産だけでなく,借金等のマイナスの財産も引き継ぐことになります。仮に,プラスの財産よりもマイナスの財産の方が多い場合には,相続人は自分の財産で借金を返済しなければならないということになります。
民法は,相続人にこのような過酷なことを強いるのは妥当ではないとして相続を放棄することを認めています。
また,遺産相続直後で,プラスの財産とマイナスの財産のどちらが多いか不明で,相続すべきか放棄すべきかの判断ができないような場合には,マイナス財産を上回る範囲でプラスの財産を相続するという限定承認という制度も認めています。
相続放棄や限定承認は,後ほど詳しく説明しますが,定まった期間内に家庭裁判所に申立を行う必要があるということを忘れないでください。

Q12 遺産相続は,死亡と同時に当然にはじまるということは理解しましたが,それ以外の場合ではじまるということはありますか?

A12 遺産相続は,失踪宣告がなされたときにも開始します。
行方不明になって7年間,生きているか死んでいるのかも分からない場合,利害関係人の申立により,家庭裁判訴は失踪宣告を出すことになります。また,戦地や沈没した船舶にいた者,その他死亡の原因となる危難に遭遇した者については,危難が去った後1年間生死が不明の場合にも失踪宣告を出すことになっています(以上,民法30条)。
そして,失踪宣告には,その人が死亡したものみなす効果があります(民法31条)。これにより,その人の相続が開始するのです。
失踪宣告による相続は,非常に稀な例で,私も今まで2例しか経験したことがありません。

Q13 遺産相続には,遺言書がある場合とない場合がありますが,手続きに違いがありますか?

A13 遺言書がある場合,公正証書によって作成されたものでない場合には,まず家庭裁判所での検認という手続を済ませる必要になります。
そして,遺言書の内容を確認して,遺言執行者の指定があれば,遺言執行者が遺言書に従って分けていきます。遺言執行者の指定がなければ,相続人が遺言書に従って遺産を分けるという作業を行うことになるのです。ここで注意を要するのが,遺言書に遺産の全てが書かれているかという点です。仮に,遺言書に遺産の全てが記載されていない場合,記載されていない遺産は,遺言書がない場合の遺産相続と同じ手続で分割されることになります。
また,相続人の寄与分や遺留分については遺言によって否定することができませんので,これらに反する遺言は,部分的に効力がないということになりますので,紛争のもとになります。
遺言書がない場合には,遺産の調査を行い遺産相続の対象になる財産を確定します。そして,これらの遺産の評価を行い,各相続人に分割するという手続を行うことになります。遺言書がない場合の手続は,全て相続人全員の同意で行う必要があります。遺産相続がなかなか解決しない理由の一つが,いずれかの過程で相続人全員の同意が得られないという事態が発生するからです。この問題を解消するには,遺言書を作成しておく必要があるのです。しかし,既に説明したように,遺言書も万能ではありませんので,遺言書があるからといって紛争が生じなくなるという保障はありません。

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